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ユーザーはどこで離脱する?動画配信アプリ9の課題と改善ポイント


1. はじめに ─ ユーザージャーニーの全体像

動画配信サービスは、ユーザーが「登録」して「初回視聴」を体験し、「継続的に使い続ける」中で運営とやりとりがあり、さらに「アプリやサービスのアップデート」が行われるという流れで成り立っています。各ステップでトラブルが生じると、ユーザーが離脱し、事業に大きな影響を及ぼします。本稿では、この4ステップに沿って9つの典型的課題を整理し、原因・対策・ビジネス面のポイントをまとめました。


2. 登録前~登録フロー

① 課金フローが複雑 & ブランド・端末混乱

問題の概要

あるサービスでは、サブスクと別サービスを急に分割し、既存ユーザーに二重手続を強いる事態となりました。別のケースでは、旧サービスと新サービスが併存してどれを契約すれば良いのか分からない状況が発生し、主要デバイスにも非対応でユーザーは登録を断念してしまいます。こうした原因で、せっかく興味を持った潜在顧客が途中離脱したり、不満を募らせた既存ユーザーが解約に至るケースが見られます。

原因

短期間で料金やプランを改定し、UX視点での見直しが追いつかなかったことが挙げられます。さらにブランド名やサービスの統合が中途半端で、ユーザーから見て「どのアプリを入れればいいか」不透明な状態に。DRMや端末対応の後手もあり、テレビで視聴できないから登録自体をやめる例もありました。

対策

ステップを減らした課金登録 UI(最小限の個人情報でトライアル開始)、複数決済方法の導入やブランド統一が重要です。主要デバイスに早期対応できるよう、プラットフォームとの契約や技術準備を最優先に進めることも不可欠でしょう。

ビジネス視点のポイント

登録フローは、収益に直結する最初のハードルです。ここをミスすると大量の顧客獲得チャンスを逃す恐れがあります。値上げやブランド移行の際は告知を十分に行い、既存ユーザーの離脱を防ぐよう配慮すべきです。


3. 初回視聴開始

② ナビゲーションが煩雑(Amazon Prime Video の例)

問題の概要

Amazon Prime Video では、見放題作品と有料レンタル作品が一つの画面で混在していた時期がありました。その結果、ユーザーは無料だと思ってクリックしたら有料だった、と落胆したり、目的の作品を見つけにくいため「最初の視聴すら達成できない」という不満が起こります。

原因

見放題と有料の切り分けが曖昧、検索機能も単純でジャンル分類が不十分だったためです。情報アーキテクチャを継ぎ足しで作り続けた結果、初回ユーザーが混乱しやすいUIが出来上がってしまいました。

対策

見放題・レンタルの視覚的区分を明確化し、トップ画面から「無料作品だけ」「新作レンタル作品」など切り替えやすくします。検索や音声認識を強化し、作品探しにかかるステップを減らす。定期的にユーザーテストを行い「本当に作品に辿り着けるか」を検証するのも効果的です。

ビジネス視点のポイント

最初の視聴でつまずくと「もういいや」と離脱されやすいです。UI改善は費用がかかりますが、スムーズにコンテンツへ誘導できれば視聴時間増やサブスク継続など大きなリターンが望めます。


③ UI広告が過剰(Hulu の例)

問題の概要

Huluの広告付きプランでは、同じCMが何度も連続再生されたり、シーン途中で不自然に割り込むなどでユーザーが快適に視聴できず、離脱が増加していました。誤タップで広告ページに飛ばされ、戻るのが面倒という声もSNSで散見されます。

原因

広告量を増やすあまり、視聴体験が損なわれる挿入タイミング・配置になっていたことが主原因です。さらに広告配信システムの制御が緩く、同じ広告を連続表示してしまう問題もありました。

対策

視聴データを分析し、ユーザーがストレスを感じにくい場面転換でCMを入れる。バナー広告は主要ボタン付近を避け誤タップを減らす。A/Bテストで広告表示パターンを比較し、離脱率やエンゲージメント指標を測定して最適解を模索します。

ビジネス視点のポイント

広告による収益とユーザー満足はトレードオフです。短期的に広告収入を伸ばしても、長期的には課金プランへの移行や視聴時間が落ちる恐れがあり、全体収益で損をするケースも少なくありません。


④ DRMエラー(Netflix / Disney+ の例)

問題の概要

DRMプロバイダの障害により、NetflixやDisney+など複数の動画配信アプリが一斉に再生不能になりました。ユーザー視点では何が悪いか分からないままエラーが続き「せっかく見ようと思った時に使えない」と不満が噴出します。

原因

共通のDRMサービスに障害が発生すると、多くのプラットフォームが同時に影響を受ける構造です。また、地域制限をUIに連動させずにエラーを吐くケースもあり、見られないコンテンツに「再生」ボタンが付いているとさらに混乱が深まります。

対策

DRMサーバーの冗長化や監視を強化し、万一の障害では迅速にユーザーへ告知します。再生前にライセンスや地域判定が不適合な作品は、再生ボタンを無効化し理由を明示すると良いでしょう。

ビジネス視点のポイント

ユーザーにとっては理由がどうであれ「見れない」事実が重要です。事後対応としてSNSやアプリ内ポップアップで状況を説明し、信用を守ることが欠かせません。


4. 継続視聴期間

⑤ 全画面/回転で再生設定リセット

問題の概要

スマホやタブレットで画面を回転すると、再生速度・画質設定などが初期値に戻る現象です。倍速視聴や高画質視聴を好む層ほど「毎回設定をやり直すのは面倒」と離脱要因になりがち。

原因

モバイルOSの画面回転イベントで、アクティビティやビューコントローラが再生成される仕様を考慮していないのが典型です。プレイヤーが状態を保持していないので、回転→再生成→初期化のサイクルが発生します。

対策

再生状態を onSaveInstanceState() やViewModelなどで保存し、復元ロジックを明確にする必要があります。回転自体を固定できるならオプションとして提供しても良いでしょう。

ビジネス視点のポイント

小さな不便の蓄積はユーザー体験全体を大きく損ねます。こうしたUXの粗は競合サービスとの差となり、離脱や解約に直結しかねません。


⑥ 視聴履歴ズレ・レコメンド精度問題(Netflix の例)

問題の概要

Netflixのレコメンドは視聴データを基にアルゴリズムが最適化を図っていますが、一部ユーザーからは「全然好みに合わない作品を高マッチ率と表示される」「続き再生が初期化される」などの声があります。履歴同期が不十分だと、別デバイスで視聴した進捗が反映されないことも。

原因

機械学習アルゴリズムの目的が「視聴時間延長」に偏りすぎ、ユーザー好みと微妙にずれるケースがあります。またデバイス間のクラウド同期遅延で「どこまで見たか」データが反映されず、再生位置やレコメンドが崩れる例も考えられます。

対策

バックエンドに視聴データを集約し、定期同期でズレを最小化します。レコメンドの評価指標を多面的に(星評価だけでなくジャンル偏好や視聴時間帯など)取り入れ、ユーザーが「この作品はもう表示しない」ボタンで訂正できるUIも有用です。

ビジネス視点のポイント

レコメンドの不精度は継続利用に影響します。作品発見の楽しさが失われると、解約率がじわじわ上昇する恐れがあります。地道にアルゴリズムを改善し、ユーザー満足度を高める投資が大切です。


⑦ シークバー操作が不安定(HBO Max の例)

問題の概要

HBO Maxがある時期、Apple TV向けに独自UIへ切り替えた結果、±15秒スキップやタッチパッドでのシークが動作しない、字幕切り替えも不可能になるといった致命的バグが生じ、SNSで「巻き戻しすらできない」と猛批判を浴びました。

原因

標準プレイヤーに頼らず独自実装をしたものの、プラットフォーム固有の操作を十分考慮していなかったことが引き金です。シーク操作やリモコン連携をテストしきれず不具合が表面化しました。

対策

プレビューサムネイルや±10秒ボタンを整備し、ユーザーが細かい操作をしやすくする。標準ライブラリを活用しつつ、独自UIを導入する場合は大量の実機テストを行い、操作性を担保します。

ビジネス視点のポイント

視聴中の巻き戻しや早送りができないのは大きなストレスです。コンテンツ内容と無関係に「使えないサービス」と認識され、解約率上昇や悪評につながります。


5. アプリ更新/アップデート

⑧ ピークアクセス時のサーバーダウン(ABEMA などの例)

問題の概要

ABEMA(以前の事例)や他社サービスでも、大型ライブイベントや話題作の公開直後にアクセスが集中し、サーバが耐え切れず配信停止。視聴者がクライマックスを見られず怒りや嘆きがSNSに溢れるパターンです。

原因

負荷試験不足やオートスケール設定が甘く、想定以上の同時接続に耐えられない。CDN配信がうまく機能せず輻輳を起こすなど技術的要素が大半です。イベント特需を見誤った運用面も原因になります。

対策

事前に大規模負荷テストを実施し、クラウドやCDNの拡張を確保しておく。急激なスパイクを緩和するため、段階的リリースや先行予約制度を導入するなども考えられます。

ビジネス視点のポイント

話題イベントはユーザー獲得の絶好チャンスであり、ここでダウンすると企業イメージが一気に悪化します。費用をかけてでもインフラを強化すべき重要領域です。


⑨ アップデート後データ初期化(HBO Maxの移行例)

問題の概要

HBO系のサービスが新アプリに統合された際、旧アプリで作っていたウォッチリストやお気に入りデータが引き継がれず、ユーザーが一から再登録しなければならない事象が発生しました。視聴履歴や設定もリセットされたとの報告が多数。

原因

旧バージョンから新バージョンへマイグレーションが中途半端で、ユーザーデータをサーバーで包括的に管理していなかった。バージョン間の互換テスト不足も考えられます。

対策

サーバーサイドに履歴やお気に入りを保存し、端末をまたいでも状態を維持できる仕組みを構築。大幅アップデートや統合が不可避な場合はユーザーへの事前アナウンス(「お気に入りをメモしておいてください」など)を徹底し、テスト環境で移行手順を確実に検証します。

ビジネス視点のポイント

一度ユーザーの視聴データが消えると、信頼回復が非常に難しいです。長年使っているコアファンほどショックが大きく、離脱リスクが高まります。大規模リニューアルではデータ移行を最重要課題として捉えるべきです。


6. まとめ ─ 全体最適で離脱を防ぐ

ここまで9つの課題を、ユーザージャーニーの流れに沿って見てきました。それぞれの問題は、一見テクニカルな不具合やUIの粗に見えますが、ビジネス全体のイメージや顧客ロイヤリティに大きく影響する要素です。

  • 運用体制の強化: 負荷監視・セッション管理・ライセンス制御などをルール化し、異常時のアナウンスも迅速化する
  • UI/UXの地道な改善: 初回登録から継続視聴、アップデートに至るまでユーザー目線でテストし、A/Bテストやヒアリングを積み重ねる
  • データ移行とアップデートの慎重さ: 大きな改変をする際は事前アナウンスや十分なテストでデータ消失を防止

結局はサービス全体を俯瞰し、「どこで離脱が起きているか」を正確に把握して改善することが、動画配信ビジネスの成功を左右します。


7. 開発・修正のご相談はお気軽に

もし貴社で以下のような課題を感じていらっしゃるなら、ぜひ当社にご相談ください。

  • 課金・登録フローが煩雑で登録者が途中離脱している
  • UI広告が多すぎて不評だが、最適な広告運用に悩んでいる
  • DRMエラーや画面回転、レコメンドズレなどUX面の苦情が絶えない
  • アプリ更新時に視聴履歴が消えるなど、運用トラブルが多発している

新規サービス立ち上げから既存アプリのUI/UX改善、負荷対策・DRM連携、データ移行まで幅広くサポートいたします。離脱率の低下とユーザー満足度向上を同時に実現に弊社をお役立てください。以下よりお気軽にお問い合わせください。